できる仕事を与えるのではなく、本人の意思を尊重して業務内容を決定する

できる仕事を与えるのではなく、本人の意思を尊重して業務内容を決定する

グループ内の各種サポート業務を行うシダックスオフィスパートナー株式会社は、障がい者雇用の特色ある優れた取り組みを行う企業を表彰する「令和3年度 障がい者雇用エクセレントカンパニー賞(東京都知事賞)」に選定されました。今回は、障がい者雇用の採用を担当している保永さん、高橋さん、田中さんにインタビューしました。

保永さん

前勤務先が2008年シダックス株式会社の完全子会社化となり、シダックスグループ人事部長として、両社のメンバーシップ型人事制度統合や役職制度の統一、労基法遵守の労働契約の仕組みを構築。当職務と並行し2011年障がい者雇用に関する特例子会社の設立を担当後、代表取締役に就任。現在に至る。

高橋さん

シダックス株式会社に入社後、全国への転勤を経験する中で、障がい者雇用や休職に至る社員、また東日本大震災のボランティアを経験し、社員に向き合うためのカウンセリングを勉強。その後特例子会社へ出向。「社員の成長、やりがい、モチベーションの維持・向上」にフォーカスし日々取り組んでいる。

田中さん

食に関することに興味があり、1995年12月シダックス株式会社に転職。そこから13年間新規開店から人事管理を中心とした運営管理全般に従事。2011年特例子会社に出向。教育を担当するキャリア推進室を立ち上げ「働き続ける力を身に付ける」を目標に掲げ、社員全員のキャリア形成に取組んでいる。

障がい者雇用開始のきっかけを教えて下さい。

シダックスオフィスパートナー株式会社は、シダックスグループで働く障がい者の方の採用・管理を行っている特例子会社です。現在シダックスグループ全体では、約4万人の社員が在籍しています。社員数が多い分、多くの障がい者を雇用しないといけません。私が人事部に携わったのは2000年頃になりますが、その頃まで何年も法定雇用率をなかなか満たすことができていなかったので、障がい者雇用の改善を担当することになりました。

2011年、各社に採用を一任していた状況から雇用をもっとスムーズに進めるために特例子会社を立ち上げ、会社名も「オフィスパートナー」と名付け、まずは社内の従業員のサポートを行い、社内でのイメージを変えることから動き出しました。

雇用の方針について教えて下さい。

雇用方針は、「働くことが困難な障がい者の方の仕事を生み出すこと」です。雇用に関しては、障害の程度や種類も含めて、どのような障害を持っていても働けるよう、たくさんの職種をラインナップしています。550人もいると、障害の程度や障害の種類によって、できることやできないこと、得意なことや不得意なことが多種多様に存在します。シダックスには500の仕事が存在するので、複数の仕事の中から、障がい者と一緒に働ける職域を切り出していくことが大切です。

一般的に精神障がい者や知的障がい者の方は、身体障がい者と比較しても就職しづらい状況です。シダックスには、500種類もの業務内容があるので、その業務を彼らの適性にマッチさせ、彼らの可能性を私達の手で拡げていきたいと思っています。

インタビューの様子の画像

 

雇用を開始するにあたって、どのようなことから着手しましたか?

障がい者雇用に関する知識が全くない状態で支援員になったので、「障害者職業生活相談員」という資格や「ジョブコーチ」資格を取得し、相談や指導の仕方について学びました。
障がい者雇用に携わる方が、二日間の研修で取れる障害者職業生活相談員や、六日間の研修で取得できるジョブコーチ資格です。
スタッフから相談を受けたときにどのように受け答えをするか」「どのように対処すべきか」仕事の進め方といった、基礎部分を身につけることができます。

知的障害の方は「視覚的に画や写真で示すとわかりやすい」といった知識もなかったので、「どのような方法であれば業務がスムーズに進行するか」や「納期に間に合うのか」といった、専門的な知識の取得を行うことで、問題を乗り越えました。

他には、障がい者雇用に関するセミナーなどに参加し、他社企業との繋がりを持ちながら、業務の切り出し方や、障害を抱える方に対しての困りごとなどについて情報共有を行いました。

障がい者スタッフとの関わりについては、月に1度、支援機関と弊社と障がい者スタッフ本人で三者面談の実施をするようにしています。三者面談の中では、主に障がい者スタッフ本人の悩みを聞いたり、課題についての改善策を話し合います。加えて、日々の活動について切り出した仕事をどんなふうに進めているか、この仕事の適任者は誰なのか、みんなが業務を遂行しやすいよう、障がい者スタッフ本人とコミュニケーションを取る機会を増やし、信頼関係を築いていきました。

 

雇用をするうえで、苦労したことや問題点などはありましたか?

障がい者スタッフの「ビジネススキル」や「コミュニケーションスキル」の学習の場がなかったことです。いわゆる、社会人スキルが未熟なスタッフが多かったので、対人関係での揉め事は多くありました。障がい特性によって伝え方や受け止め方など、独特なところもあるので、苦労した部分は多くありました。

また、「セルフケア」についての知識も薄かったので、体調を崩して会社を休むことが多くなり、定着せずに退職をしてしまうスタッフも少なくありませんでした。

具体的にどのようなことが問題としてあげられたのでしょうか。

例えば、長袖のシャツを着てきたスタッフに対して「パジャマみたいだね」といったスタッフがいて大きな揉め事に発展しました。受け取る側も、そういったことを聞き流したりすることができないので、対処法に悩みました。この問題に対しては、資格を持った精神保健福祉士の方に協力してもらい、聞き取り調査など実施後、スタッフの気持ちを鎮めるような形で対応していただきました。

 

雇用をする上で、大切にしている点はありますか?

大切にしていることは2つあります。1つ目に「本人の意思を尊重すること」です。本人のやりたいことやりたくないこと、目指したいこと目指したくないこと、いろいろあると思います。単にその人ができる仕事を切り出してお願いするのではなく、本人の興味関心があることや、やりたいことを汲み取り、少し難易度が高いと感じる業務であっても本人の意思を尊重して業務内容を決めます。

2つ目に「やりがいへの配慮」です。仕事をしてもやりがいを感じなかったら、なにも面白くないですよね。やりがいを感じられるような体制作りや、やりがいに関する取り組みを進めていくことを大切に考えています。

今後の展望について教えて下さい。

制度設計を大切にしていきたいです。将来設計についてですが、いま働いている障がい者スタッフが定年まで、いかに上手に働くかが大切になってくると思います。定年まで一緒に働けるような将来設計と目標設定の提供をしていきたいです。私としても、障がい者スタッフには戦力になってほしいです。ただ単に働いていければいいということではなく、ちゃんと目標をもって働いてもらえるような、組織づくりについても考えていきたいです。

また、今後も障がい者枠の採用数が増えていく予定でして、その分母がどんどん増えていくと長期契約が待っています。新規でアサインされる方には、ベテランの方に追いついて行ってほしいというのがありますので、採用とそれから中身の質的なものですよね、どんな風な仕事をやって頂くのか、それも含めてしっかりと確立をしていきたいとそんな風に思ってます。

 

ワークリアとは

ワークリアは、障がい者専門の人材紹介サービスと障がい者雇用にまつわるコンサルティングサービスを運営しております。
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