目標達成に向けたプロセスが定着の力になる

目標達成に向けたプロセスが定着の力になる

HITOWAホールディングス株式会社の特例子会社として、2016年にHITOWAソーシャルワークス株式会社を設立。「一人ひとりの個性と強みを活かしながら誰もがいきいきと笑顔で平等に働ける社会を創る」という理念のもと、様々な障がいを持つスタッフが定着しています。今回は、管理者の中垣さんにインタビューしました。

中垣さん

総合商社、外食産業を経験し、高齢者福祉、障害者福祉に転向
行政の高齢者福祉課にて認定調査員、デイサービス相談員
社会福祉法人にて障害者の相談員、地域支援、福祉教育、B型作業所等、重度から軽度の障害者の支援 
行政の高齢者福祉課にて認定調査員
2012年~ HITOWAケアサービス(株)有料老人ホームイリーゼ管理者、同社人事部課長
2016年~ HITOWAソーシャルワークス(株)次長
資格:社会福祉士、公認心理師 他

障がい者雇用をはじめたきっかけを教えて下さい。

創立以来24期連続して増収し続けるHITOWAグループで、雇用率の管理及び計画的な採用のために特例子会社が設立されました。当時私はHITOWAケアサービス人事部に所属しておりましたが、前職での障がい者支援の経験から当社(特例子会社)に配属になりました。他の社員二人と一緒に、特例子会社及びグループ各社の障がい者雇用を進めていきました。

はじめはどのような方針で進めていったのでしょうか。

いきいきと働く社会を創るという理念を掲げているように、障がい者が安心して長く働き、キャリアアップできる環境を作りたいという思いがありました。精神保健福祉手帳をお持ちの方の比率が高い昨今、その方のその時に合わせた柔軟な配慮や、面談技術はもちろん医療・地域連携できるソーシャルワークスキルが必要だと思い、スタッフの増員に合わせて社会福祉士やジョブコーチなどの有資格者の採用や資格取得支援を進めて参りました。グループ各社も当社をバックアップしてくれたので、とてもいい環境だったと思います。

その他には、採用から定着の流れ、アセスメント、モニタリングなどのフローやマニュアル作りを着々と進めていきました。スタッフの面接の際の質問項目や注意事項をまとめた面接シートの作成や入社後の目標設定や評価方法、日々の面談と共有方法など、必須事項から形を作っていきました。

業務の切り出しはどのようにされていたのでしょうか。

最初はグループ会社から頼まれた業務を発生ベースで行っていましたが、徐々にこちらからも提案していくようになりました。「このような業務ができます」や「経理の経験があるスタッフを採用しました」などと情報を発信して、スタッフの強みを活かした業務を頂けるようになりました。

人事部からの業務も最初は書類のスキャンやコピー、ファイリングだけ受託していたのが、今では入退社や社会保険に関する業務までルーチンで発注頂いています。一連の仕事をABC…と分割して、最初はBだけだったけど、AとCもと更に業務の幅が広がったものもあります。

また、グループ内で有料老人ホームや保育園の運営をしているので、事務はもちろん、ハンドメイド作品の制作でもお手伝いしています。ホームでは入居者様やお客様に心のこもったお祝いやお見舞いを手作りしたいけれど、忙しい現場で大量に作るのは難しい。そこで、私たちがペーパークラフトで立体的な季節の花や、切り絵を施したメッセージカードを制作し、各ホームにご好評を頂いています。手作りのおもちゃを特徴としている保育園からも、定期的にお手玉やぬいぐるみ、そして英語教材の制作を依頼されています。

雇用を進めていく上で出てきた課題はありましたか?

規模が大きくなるにつれて様々な障がいのある方を採用しているので、障がい者の社員間で若干の戸惑いが出てきました。特別支援学校から知的障がいや発達障がいの方も積極的に採用するようになったので、まさしくダイバーシティの課題である、相互理解の難しさが顕著になってきました。
そういった軋轢が発生することは覚悟の上だったので、不平や不満が上がった際には皆とじっくり面談し「共に生き、共に働く社会」について一緒に考えて頂いたことで、より一層この職場を大切にする動機づけになったと思っています。

精神障がいの方の心身の安定や、知的障がいの方の生産性については、個別支援を丁寧に行い、目標を何度もリマインドして、日々の積み重ねが確実にご自身の成長の手ごたえになるようにしっかり支援し、評価をしています。

様々な障がいを持つ方を雇用されている背景はありますか?

現在、精神障がい者35名、知的障がい者11名、身体障がい者6名のスタッフがいらっしゃいます。同じようなスキルと特性の方を採用した方が、皆のストレスも少ないのかもしれませんが、社会の縮図である会社という場で、ストレスも権利と考え、社会性を身につけるための体験も大切にしています。みんな違う個性を認め合い、チーム力を高めてこそ共に成長できると思っています。

面談をこまめに行っている印象ですが、その中で大切にしていることはありますか。

スタッフ自身で立てて頂く目標を一番大事にしています。半年に一度、自社で作成した「目標ハンドブック」を使用しながら1ヶ月ほどの期間をかけて設定します。まずは3年後、5年後にどういう姿になっていたいのか、それから、そのためにはどんなスキルが必要でこの会社でできることは何か、という中長期目標を決めます。そのために「〇〇のトレーニングをする」「生産性シートを作る」とか、具体的に可視化できる目標にフォーカスし、それが半期の目標になります。評価基準も明確に決めて頂いています。例えば、5段階評価で生産性が10%上がったら3、20%上がったら4、等とご自身で設定し、毎月の定期面談で自己評価と他者評価をしていきます。

まず自分がどうなりたいかという長期目標を立て、それを今期の目標に落とし込むことで、たとえ何か注意を受けたとしても、スタッフは自分の目標達成のための支援と受け止め、主体性が芽生えます。

スタッフの中には自己肯定感の低い方も多いですが、半年、1か月、本日とスモールステップを確実に達成することで自信を持つことができます。これは、私たちの行動指針『コツコツと真面目でがんばりやさん…』を体現化している事にもなります。

日ごろからこまめに面接をして記録を重ねることで、その方の思考の癖や特徴が見えてきます。また、スタッフの日報からデータ集積し分析すると、天候やイベントなどで体調が左右される方もわかってきます。体調の変化する前に予測して面談をしたり、フォローの声掛けをしたり、体調が崩れがちな時期は余裕を持ったシフトにしたり、お休みされることへのリスクマネジメントをしておくなど、ご自身が落ち込みすぎないように工夫しています。

特例子会社で障がい者雇用を始めて良かった点と、今後の展望を教えてください。

良かった点は、もう無理かもと思った時に自身を客観的に振り返り、踏みとどまれる力をつけて頂けたことです。スタッフの中には、過去に何度も就労を継続できずにいたけれど、辛いときに相談できたり、カウンセリングを受けたりできる環境で働くことで、今は乗り越え方や踏みとどまる力を身に着け、その経験を活かして自分の強みにしている方がたくさんいます。今を褒めることは誰にでもできると思いますが、過去との差とその苦労を共に讃えられるところが、特例子会社の良いところだと思います。苦しさを抜けたときの自己成長はご本人にとって大きな自信になるので、一緒に悩み、もがきながらそのお手伝いができる私たちも成長させて頂いていると思います。

今後の展望としては、時代に合わせて柔軟な働き方ができるように対応していきたいです。直近では新型コロナウイルス感染症の拡大が、多様な働き方を考えるきっかけとなりました。
在宅勤務、リモートワーク、オンライン会議などが急激に進む社会の中、必要性を感じつつも、当社の強みでもある、スタッフの顔色や服装のちょっとした違いで異変をキャッチするという支援が行き届かないのではと懸念しました。しかし、時代の流れや今後限られたスペースで採用を進める上でも必要だと感じ、少しずつプレ在宅(職場内の会議室で終日仕事をする)など練習を重ねながら進めていきました。

障がい者雇用の職域を広げ、生き辛い思いをしている方々や重度の障がい者採用など、社会的な課題を解決するという当グループの使命を果たすために柔軟かつ積極的に今後も取り組んでいきたいと思っています。

ワークリアとは

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