障がい者雇用を通じて組織の多様性を推進する

障がい者雇用を通じて組織の多様性を推進する

「キリングループ障害者雇用憲章」※を前提方針に、誰もが活き活きと働けるKIRINらしい雇用環境の実現に向けた取り組みをしているキリンホールディングス株式会社。エリア限定職という職種を作り、一人ひとりが持つ強みや可能性を力に変え、組織や業績に貢献する人財の雇用を進めています。今回は、障がい者採用や成長支援を行う今井さん、佐々木さんにインタビューしました。

※キリングループでは、共に働く仲間が感じる不自由さ、即ち「障害」を取り除き、活躍支援にグループ全体で取り組む意志を込めて、「障害」という表記を採用しています。以下、障害者雇用憲章については「障害」の表記を行い、それ以外については、当社(ワークリア)の表記の方針に沿って「障がい」の表記をします。

今井さん

入社後は営業職の社員に向けた研修などの成長支援を担当。2022年10月に異動し、現在は人財戦略部でホールディングス全体の採用を担う。

佐々木さん

前職で障害者職業センターのカウンセラーとして障がい者雇用に関与した後、入社。人事部門で多様性推進や障がい者採用を担当後、現在は障がいのある従業員の成長支援を担う。

障がい者雇用を本格的に始めたきっかけを教えて下さい。

2013年に組織改編があり、キリンビールやキリンビバレッジなどの国内の飲料事業を統括する中間持株会社であるキリン株式会社(2019年にキリンホールディングス株式会社に吸収合併)を設立しました。それに伴い、2015年より、各社で進めていた障がい者雇用について採用計画や支援の方針を戦略的に行っていくために、キリン株式会社としての障がい者雇用がスタートしました。

以前から障がい者雇用には取り組まれていましたが、2015年に新しく始めた取り組みはありますか?

キリン株式会社が設立される前の2011年1月に『キリングループ障害者雇用憲章』が制定されており、誰もが活き活きと働けるKIRINらしい雇用環境の実現に向けて各社が取り組んでいました。この憲章を基本方針とし、2015年には障がい者雇用の職種としてエリア限定職(原則として転居を伴わない通勤可能範囲で一定分野の業務に精通する人財として活躍することを期待役割とする職種)を新しく作り、採用活動を本格始動しました。しっかりと事業に貢献して成果を発揮し、会社・従業員にとっても、より成長を実感する狙いがあります。

障がい者雇用の方針を教えてください。

自分の強みを活かしながら、どんどん自分でキャリアを築いていきたいというような、障がいを強みに変える力を持っている方を採用していきたいと考えています。集合配置ではなく拡散配置をしており、配属先も人事部門や総務部門と決まっているわけではありません。本人のWillをベースにマーケティングや広報部門、技術系の品質管理を担う部門など、幅広い職場で活躍いただいています。

採用時に見ているポイントとしては、障がいの有無に関わらず私たちが大事にしている『熱意、誠意、多様性』の3つの価値観に合うかどうかです。自分の障がいを受容して理解しているのか、さらに、周囲からの配慮を待つ受け身の姿勢ではなく、働くうえで必要な配慮事項を自身で理解し、必要なタイミングで自ら相談をするなどの前向きな姿勢があるかという点に注目しています。

 

それだけ前のめりに障がい者雇用を進められているのはどうしてでしょうか。

私たちが会社全体で大事にしている価値観のひとつに、多様性があります。そもそも会社として社会的価値と経済的価値の両立をさせるCSV経営を根幹においていて、そのためには新しい取り組みやイノベーションを起こしていく必要があります。それにあたって、均質的な人を育てるのではなく、幅広いバックグラウンドや価値観を持っている方たちと働きたいという考えがあり、多様性に繋がっています。女性の活躍やキャリア入社なども含まれますが、障がい者雇用はその多様性の枠組みの一つとして進めています。

今井さん、佐々木さんの画像

 

雇用を進めていくうえでの課題はありますか?

採用規模が拡大し、その中で多種多様な障がい種別の方を採用しているため、社内でのさらなる理解促進や受け入れ体制の整備はまだまだこれからだと感じています。障がい者雇用を始めた当初は年に1,2名の採用だったので、困りごとが生じた際にその都度対応をするスタイルで解決できていました。近年は採用人数を拡大しており、年に複数名を採用しているため、障がいのある従業員のさらなる成長や活躍を考えると、より配属部署との情報共有や支援スキームの構築を行っていく必要があると思います。

そのための取り組みの一つとして、今年(2023年)障がい者雇用のハンドブックを内製し、グループ全体に展開しました。このハンドブックには、グループの人財戦略、障がい者雇用の方針、障がいに関する基本知識や、共に働く際のコミュニケーションを始めとする配慮ポイントなどをまとめています。ハンドブック以外では、障がいのある従業員を配属する部署に向けて、外部講師を召喚して理解促進のための説明会を実施しています。また、配属部署だけでなく障がいのある従業員自らも能動的に働きやすい環境作りをしてほしいという想いがあり、マインドセットの意味合いも込めて、内定者を対象に自己理解やキャリアワークショップなどの企画も実施しています。

多様な部署に配属していますが、現場への理解の浸透について工夫していることを教えてください。

一人ひとりの障がいや配慮の度合いが違うので、配属部署とも密にコミュニケーションを取りながら進めています。雇用している従業員の障がい種別は、身体障がいや精神障がい、発達障がいなど様々です。また、配属部署についても、営業事務系から生産技術系の部門まで多岐に渡ります。その中で採用・配属して終わりではなく、障がいのある従業員やその上長との定期面談の実施、配属先の事業会社の人事とも連携し、現状を早期にキャッチアップできるよう努めています。

配属先の決定に関しては配属候補の部署とやり取りをして決めています。配属先を検討する担当者に内定者の詳細な情報を随時共有することに加え、しかるべきタイミングで、配属先を検討する担当者と内定者面談を実施し、内定者との直接的なコミュニケーションを通じて理解を深めることで、幅広い配属を実現しています。

最後に、障がい者雇用をしてよかった点や今後の展望を教えてください。

よかった点は、多様性の理解や受容促進が従業員のより深いお客様の理解にもつながっているという点です。例えば、数年前の事例になりますが、視覚障がいのある社員の発案により、アイマスクなどを着用しながら視覚障がいのある状況を体感し、視覚障がいのあるお客様がどのように商品を購入されるか体験するという内容の社内向けワークショップを開催しました。人事部門のみならず、マーケティング、法務、知財、営業、包材に関係する部門などに展開し、従業員のお客様理解を広げたことがあります。

また、障がい者雇用の拡大は組織の働きがいというソフト面にも貢献していると感じます。私たちは「やりがいではなく働きがい」と組織内で発信していて、自身の活躍の場のようなやりがいに加え、ワークライフバランスを含めた働きやすさを両立させていこうと取り組んでいます。障がいのある従業員と共に働くことで、「こうするともっと皆がうまくいくよね」「この方も活躍できるよね」というように、意識の部分で働きがいを求める風土ができてきました。このように意識が向いている状態が、まさに働きがいという部分における組織改革だなと感じるので、フレックスや在宅勤務制度などのハード面だけではない、ソフト面での貢献は大きいと思います。

今後は、今まで以上に一人ひとりが多様性に適応してそれを力に変えていくために、組織風土の醸成と働く環境の整備を進めていきたいです。障がいの有無に関わらず、働きがいを通じて成長実感を高め、その力を発揮して組織貢献していくというKIRINらしい雇用を促進していけたらいいなと思います。

 

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