障がい者の雇用体制を見直し、新しいキャリアアップ制度を制定

障がい者の雇用体制を見直し、新しいキャリアアップ制度を制定

共同印刷株式会社の子会社である、TOMOWELビジネスパートナー株式会社。障がい者雇用の体制を見直すべく特例子会社の認定を取得し、障がい者の社員の満足度や定着率を高めることに成功しています。今回は、障がい者雇用の担当である箕輪さん、三浦さん、臼井さんにインタビューしました。

共同印刷株式会社

共同印刷株式会社は、書籍や雑誌をはじめとした出版印刷や商業印刷物はもちろん、マーケティングからプロモーション、各種媒体の企画・制作、電子書店の運営やITソリューションまで、幅広い事業を手掛けています。

TOMOWELビジネスパートナー株式会社

TOMOWELビジネスパートナー株式会社は共同印刷株式会社の特例子会社です。共同印刷グループで働くすべての関係者の働きやすさを支えるパートナーとなる企業を目指しています。

臼井さん

共同印刷株式会社人事部人材開発課課長代理。障がい者雇用を担当。
雇用体制を再構築する際の企画、運営、管理を行う。(写真:右)

箕輪さん

TOMOWELビジネスパートナー株式会社ビルメンテナンス課(障がい者雇用の清掃およびメンテナンス部門)課長。印刷現場でのマネジメント経験が高く評価され、2018年より現在のポジションに抜擢される。(写真:左)

三浦さん

共同印刷株式会社にて出版関係の営業職のリーダーを経験後、TOMOWELビジネスパートナーのオフィスサポート課(障がい者雇用の事務職部門)の課長に就任。(写真:中央)

障がい者雇用を本格的に始めたきっかけはありますか?

当社の障がい者雇用の体制が大きく変わったのはここ数年の話で、それまでは最低限の法律対応をしていこうというスタンスでした。当時の担当が、粛々と法定雇用率を満たす時期が長く続いていたのですが、法定雇用率が2.2%に上がったタイミングで多くの離職も重なり、当社の雇用率が大きく落ち込んだ時期がありました。この頃は、工場での軽作業・清掃業を障がい者の方にお任せしていましたが、今後も法定雇用率は上がることが想定されている一方、同ポジションでは更に人員を配置することが難しい状況でした。別の業務で障がい者雇用をする必要があるという判断となり、事務職で雇用を開始していく方針になったのが当社の転換期です。

どのように採用を進めていったのかを教えてください。

事務職に関しては、これまで障がい者の雇用実績がなかったので、まずは人事部にて事務業務を切り出し、成功体験を作ろうと考えました。人事部で先行して雇用することによって事務職の障がい者のモデルを1年かけて作り、そこで一定の実績を上げ、”障がいがあっても業務ができる”という安心感を受け入れ側の社員に持ってもらうということを準備段階として行いました。そして次に、他の事業部からも事務業務を切り出してもらえるよう声がけを行い、業務の領域を拡大させ障がい者採用を進めていきました。

その中で障がい者雇用が上手くいき始めたのはなぜでしょうか。

初めて事務職の募集をかけた際は、支援機関・ハローワークを利用していましたが、なかなか集まらず、時給を上げて対応をしたこともあります。その後は、近隣の特別支援学校と連携し、候補者の方にまず実習(インターンシップ)に参加してもらいました。実習を受けている候補者に訴求ができるように、既存社員を対象にした障がいの特性を理解してもらうための研修や、指導する人員の配置や面談の強化など実習体制の整備を行い、徐々に応募数を増やしていきました。

また、雇用を進めていくなかで制度にも着目するようになりました。共同印刷株式会社本体で雇用していた時は、障がいを持っている方のためのキャリア制度を構築できておらず、契約社員という有期雇用をベースとせざるを得ない状況でした。当時、障がい者の社員やそのご両親から「正社員になることはできないのか」、「有期雇用だといつ切られるか分からなくて不安」という声を聞き、障がいがあっても雇用形態の選択肢や昇給制度など、働きがいになるものを作らなければいけないと危機感を感じました。そのため、TOMOWELビジネスパートナー株式会社では、そのようなキャリアアップ制度を取り入れ、それからは”昇給あり””正社員登用あり”という条件で募集もかけられるので、以前よりは良い印象を持ってもらえ、応募に繋がっているのではないかと思います。

また、制度を作ったことにより、社員のモチベーションの向上が目に見えています。まだキャリアアップ制度が無かった時代、面談でやりがいについて問うと黙ってしまっていた方が今では「リーダーを目指したいです」等と発言をしてくれるので、人事制度は社員のモチベーションや満足度に繋がるということを改めて感じております。

TOMOWELビジネスパートナー株式会社 の画像

(写真左より 箕輪さん 三浦さん  臼井さん)
 

 

事務職として障がい者雇用を進める中で、大変だったことはありますか?

まず始めに苦労したことは、受け入れる前の業務抽出でした。障がいのある方を事務職として雇用するノウハウが社内になかったので、”障がいがある人はどういう仕事ができるのか”ということを学ぶ研修から始めました。それから「各部から業務を出してください」、「こういう業務が適していますよ」という呼びかけを行ったのですが、ある一定の業務量を抽出するまでが大変でした。
実際、メイン業務として切り出したものは、製造部門のシフト登録等といった社内の人事管理システムの設定関係です。それまでは正社員でやっていた業務でしたが、一番量が多く固定的という理由で選定しました。

事務業務を切り出すためにどんな工夫をされたのでしょうか。

今では営業職場の事務作業も抽出できていますが、元々は管理系部門からスタートしております。営業職場から業務を切り出すことができたのは、管理者の1人が営業職出身ということもあり、元いた部門の業務内容のなかで抽出できそうな事務作業はどんどん提案し、間に入りフォローができていたからだと思います。一度業務をお願いされるとリピートでお願いされるケースが多かったり、自然とポジティブなクチコミが広まったことにより、認知され、相談数が増えたように思えます。また、業務抽出の相談のきっかけづくりになるよう、社内向けに障がい・障がい者の理解に繋がるメールマガジンの配信も行っております。

雇用を拡大するにあたって起きた問題はありましたか?

雇用拡大には当然支援側の人員配置が必要になりますが、マネジメントや指導経験がある人材を障がい者雇用部門に配置することが難しく、マネジメントや指導経験がある人材をどう障がい者雇用部門に配置するかについて課題がありました。

どうやって課題を乗り越えていったのでしょうか。

経営側と障がい者雇用の重要性についての合意形成をすることからスタートしました。その後は社内公募で人材を募集することができ、当社内の営業職としてマネジメント経験がある者を障がい者雇用部門へ抜擢しました。営業職のマインドが粘り強く指導するという部分に繋がり、課題を改善することができたと思います。指導する際は、就労に必要なことであれば「ここは直していこう」ということを根気強く明確に示していくこと、就労移行支援機関の支援者様や親御様を巻き込み、指摘する時はしっかり行う等、関係者を含めた面談を定期的に実施しました。そういった取り組みを経て、社員に少しずつ改善していこうという気持ちを持ってもらえることができ、全てに前向きに取り組むようになってくれました。

最後に、障がい者雇用の今後の展望を教えてください。

TOMOWELビジネスパートナーは、共同印刷グループの働いている方々のサポートをするということを事業としているので、あくまで障がい者が働いていく中で本業に資するところで業務の領域、雇用数を拡大していきたいです。また、制度を活用し社員がモチベーション高くキャリアを積んでいけるようにサポートをし、一緒にこの会社を発展させていきたいと思っています。
また、グループ全体を鑑みたとき、まだ障がい者の雇用環境整備や雇用率が十分でない会社もあるのが実情です。そのような会社に知見を提供し、グループ全体の障がい者雇用を牽引していける存在になりたいと考えております。

 

ワークリアとは

ワークリアは、障がい者専門の人材紹介サービスと障がい者雇用にまつわるコンサルティングサービスを運営しております。
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