2022.11.02
2022.11.02
ブックオフコーポレーション株式会社のグループ会社として、2010年に設立されたビーアシスト株式会社。障がい者雇用を開始して12年が経過します。雇用をはじめた当初の話や雇用の工夫について、障がい者雇用を担当している塚越さん・深水さんにインタビューしました。
2012年ビーアシスト㈱ 瀬谷事業所にサポートスタッフ(パート・アルバイト)として入社し、約3年間、障害を持つスタッフと共に作業をしながら個人特性・作業特性を学ぶ。その後社員となり、町田事業所へ異動。2018年町田事業所長を経て、現在は事業所の運営管理や請負業務の開発・調整、パートナースタッフ・サポートスタッフの育成をおこなっている。
1997年ブックオフコーポレーション㈱入社
店長、エリアマネージャー、新規事業立ち上げ等を経験後、2009年障害者雇用推進
担当となり、グループ各社での障害者雇用と職場環境の整備を行った。2010年に設立した特例子会社ビーアシスト㈱の設立に携わり、現在は人財開発部長として、主に採用・定着支援・教育研修を担当。またグループ各社に配属されている障害を持つ従業員と支援する社員に対するサポートもおこなっている。
深水様:ビーアシストを設立する2009年以前は、物流センターで雇用を行っていましたが、店舗が増えたり会社の合併があったりと、会社の規模が大きくなるにつれて、法定雇用率を満たすことが難しくなり、店舗でパートナースタッフとしての採用を開始しました。それでも雇用率を満たすことが難しくなり、行政指導が入ってからは特例子会社の設立と新たな採用活動に向けて動き始めました。各店舗での雇用をはじめた2009年当初は、離職率が高い傾向にありました。採用や定着に対するサポートは店舗ごとに行っていましたが、店長の異動をはじめとした支援体制の変更により、パートナースタッフ本人が戸惑ってしまい、離職につながるというケースが多かったですね。
深水様:集中的に障がい者の雇用を行うようになったのは2010年からです。雇用管理のしやすさもあって、就業にあたってのビジネスマナーをはじめとした教育を着実に行うことができるようになりました。また、特例子会社で集中的に雇用する方向性に舵を切ったことで、離職を減らすことにも成功しています。
深水様:当初は、ブックオフの人財育成方法のあり方や方法論、店舗でのトレーニングのノウハウなどを駆使しながら、5人ほどの雇用から開始し、実際に障がい者を雇用して試行錯誤を繰り返してきました。しかし、課題もたくさん出てきまして……。請け負える業務の種類が少ないので、業務量の需給のバランスが取れなかったり、障がい者に対する接し方などの知識がほとんどないところから始めたので教育も今までのやり方では、はまらないことが多かったです。
塚越様:障がいに対して関わったことがない人たちが集まったので、私たち自身どこに進めば彼らのためになるのかが全くわからず、的外れなことばかりしていました。はじめは、業務を進める上で、使用するモノを彼らが探したりしなくて済むよう、整理整頓を行っていました。ただ、全然効果は出ませんでした。今思うと間違いだったなと反省しています。それよりも先に、彼らの障がい特性を把握することが大事だったんですよね。
深水様:障がい区分としては、知的障がい者が約9割です。正直、接客業務はできないだろうと思い、バックヤードの業務を中心に始めました。ただ、想像よりも仕事ができて用意した業務はそつなくこなし、ついにはレジ打ちのサポートといった接客業務にも一部挑戦することができました。店舗社員からも「レジ打ちのサポートをしてもらって助かった」「声掛けも自主的に行ってくれた」といった、ポジティブな反応を多くもらいました。
深水様:ブックオフはリユース業なので、商品のコンディションがモノによって異なり、マニュアル通りに行かないこともあります。そのため、先輩が繰り返しやって教える教育が中心となる企業文化がありました。それが知的障がい者の方にはすごくマッチしていて。それから、ご縁があった学校や支援機関に「来年もお願いします」と、声をかけさせていただき、その結果、知的障がい者の方が多くなりました。
塚越様:業務に関して依頼を受けた場合、基本的にはすべて断らず、依頼されたことは何でもやってみることから始めました。1つのタスクを工程ごとに分解し、可能な部分を探って業務を担うイメージです。まずは依頼された業務内容を確認し、分解して「ここからここまではできそう」「時間かければ全部できそうだけどトレーニングに時間がかかるので、ここの部分はまずは店舗でお願いする」といったように、分解して対応領域を交渉します。
塚越様:すべてできない場合でも、パートナースタッフ側で7〜8割くらいまでできると、店舗自体の負担も減りますし、できるものは請け負う形にしています。また、優先順位が高いけど遂行できていない業務や、量が多すぎて片付けられない作業など、痒い所に手が届くサービスを実現するスタンスで担っています。
塚越様:業務について求められている以上のクオリティを結果として出せるのが彼らの特性です。シールを貼る作業であれば、曲がっていると納得いかないので何度も剥がして手直しを加えます。スピーディーかつ、クオリティも高いので、店舗も彼らに任せてよかったと思ってもらえています。
深水様:「気持ちの良い挨拶をする」これは、ビーアシストの中で大切にしている「4つの約束」の1つです。採用に関しては、作業ができる・できないに関係なく、気持ちの良い挨拶ができる人を求めています。ビーアシストの業務はどこの事業所も、単純作業の繰り返しが多く、数年やっていくうちに覚えることができるので、作業に対してのできる・できないの心配はあまりしてないです。ただ、「お疲れさまです」や「ありがとうございます」といった挨拶がしっかりできるかを見ています。
深水様:チームで仕事することが多いので、障がい特性よりも他の人たちと一緒に仕事ができるかどうかを重視しています。加えて、自分自身の障がいを受容できていること。この2つがないと、チームで仕事をすることができないと思うので、実習や面接では、障がい特性よりも、既に働いているスタッフや社員と一緒にうまく仕事ができるかの観点で見ています。そういう意味では、メンバーシップ型の雇用となります。
塚越様:社内に対しての理解ですね。依頼された業務の認識や齟齬が起きてしまったとき、店舗社員から「どうしてこのようなことが起きるんですか」と言われてしまうことも多くありました。そう言われてしまったときに、パートナースタッフの方たちをどうしたら守れるか、また店舗社員にどう理解してもらうか、これが苦労した部分です。
塚越様:業務の依頼に関しては、私たち運営チームが必ず間に入りますが、休憩や作業指示以外のところでは、なるべく一緒に働ける場を店舗にお願いして、同じ場所で仕事をさせてもらうようにしています。彼らと直接話すことが一番早い手段ではあるので、そのような場をどこの事業所でも作り、店舗社員の理解を深めていくようにしました。
ですが、一筋縄ではいきませんでした。私たちと違って、店舗社員はパートナースタッフの障がい特性を深く理解していません。そのため、感情に訴えかけられてしまうこともあり、「一緒に仕事したくないです」と言われたときが一番困りましたね。そういうときは、その店舗社員と時間を取り、「彼らにはこのような障がいがあります」と、丁寧に説明し、伝えることを繰り返していくうちに、パートナースタッフとどのように接するべきなのか理解してもらえるようになっていきました。今は問題なく、店舗社員とパートナースタッフがコミュニケーションを取っているので安心しています。
塚越様:彼らが出してきた結果によって、障がいに対する偏見や差別が少なくなったことは嬉しかったですし、良かったなと思っています。これは、私たちが何かしたわけでなく、一生懸命働く彼らが、自分たちで勝ち取ったものだと思っています。
深水様:「実は家族に障がいがあって……」といった、社員からの相談を受けたりすることも多く、その方たちの手助けをできるようになったことは私自身も嬉しく思っています。先日、重度のうつ病で何度も休職を繰り返している方が、特例子会社に籍を移しました。今その方は、障がい者スタッフと共に仕事をすることで、仕事に対する喜びをもう一度取り戻してくれました。私たちが介入することで、力になれたことがとても嬉しかったです。
塚越様:ハンディキャップを持った方たちの雇用機会を増やすことができたらなと思っています。現場目線でお伝えすると、ブックオフグループでは、お客様からの買い取り後に一定期間販売に至らなかったモノの一部を再資源化、再利用していますが、この取り組みを福祉事業の方たちと連携して何か出来ないか検討しています。
深水様:できることも徐々に増え、活躍の場も広がっているので、今のスタイルで業務の質や量を高めていく動きをしていきたいと考えています。そのうえで、新規事業との連携など、今までよりも活動の場を広げてブックオフグループの貢献範囲を拡げていきたいと考えています。大人の発達障害や障がいをオープンにできず苦しんでいる方もたくさんいると思うんですね。そういった中で、社内の相談窓口として、ブックオフグループ社員の相談に乗ったり、アドバイスができるような集団になれたら良いなと思っています。
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