事業に貢献できる障がい者雇用の実現

事業に貢献できる障がい者雇用の実現

DMM.comの障がい者雇用の受け入れ体制を創りあげるため、専門部署として2015年2月にビジネスクリエーション部が設立。全国規模にて障がい者の採用を行い、リモートワークでも、障害を持つスタッフのパフォーマンスを最大限に発揮できるようサポート。今回は、障がい者雇用の採用を担当している梶さんにインタビューしました。

梶さん

2007年に入社。入社当初は、配信関連のコンテンツを制作する部署に配属。その後、社長室に異動し、障害者雇用率達成のためのプロジェクトを担った。その後の2015年2月に、障がい者雇用に特化したビジネスクリエーション部を立ち上げ、現在は部長を務める。

障がい者雇用を積極的に進めたきっかけを教えて下さい。

2014年6月時点の法定雇用率は2.0%でしたが、弊社の雇用率は0.9%と満たせていなく、労働局から指導が入ったのをきっかけに、障がい者雇用に力を入れる運びとなりました。

はじめは人事・総務部が障がい者雇用を担っていました。人事が採用して、その後の雇用管理は総務という役割分担で、なんとか掃除の業務を切り出し、5名の障がい者チームを作れました。しかし、その体制では業務拡張と採用が思うように拡大せず、また、「現場とのマッチングがうまくいかない」や「職場定着がうまくいかない」といった相談が社長室に寄せられたので、それを機に社長室がプロジェクトを主導することとなりました。

私が専任でプロジェクトを担当することになったので、まずは障がい者雇用の知識を学ぶためにいろいろな場所へ出向き、ノウハウを吸収しました。ハローワークや就労移行支援事業所に足を運び、「どのような障がいを持っている方がいるのか」「どのように対応すべきか」を含め、勉強を行いました。

どのようなことから着手しましたか?

まずは、リモートワークの導入からはじめました。身体障がい者の方は通勤に送迎を必要としたり、電車通勤ができたとしても通勤だけで体力を消耗してしまうことも少なくありません。また、障がい者雇用に注力する以前は、発達障害や精神障害の方も多く採用していましたが、対人トラブルが多くありました。私たちも当時はノウハウが少なかったこともあり、トラブルがなかなか収まらなく、結果的に退職をしてしまうケースも。

そこで、リモートワークなら通勤困難の解消、人間関係が苦手な人の負担も軽減されると考え、リモートワークを導入しました。2014年頃の話になりますが、当時は在宅勤務で障がい者を雇用している会社が少なかったことも導入理由のひとつです。リモートワークを導入するにあたり、私以外の管理者が必要なことや、仕事の割り振りや品質を確認したりする役割が必要となったので、体制作りも合わせて行いました。

次に、業務の切り出しについて教えて下さい。

私自身、DMM入社当初は現場で仕事をしていたり、社長室に配属される前に業務を外注する役割を担当していたので、遠隔で行う業務の切り出しや請負いについては、今までのノウハウを生かして比較的スムーズに進められました。弊社独自の話になりますが、障がい者雇用部門のPLも作ることになりました。PLを作るようになり、今までお仕事をいただいていた発注先にもお金を請求するようにしましたが、「お金がかかるならやめようかな」と言われることも増えました。お金が発生しないから業務を依頼していたことにもショックを受けましたし、同時に10人分の仕事がなくなってしまいました。

業務を増やすための施策としては、社内営業を積極的に行いました。まずは売上よりも障がい者スタッフの稼働を重視するため、値引き交渉をしながら、赤字覚悟で業務を受託しました。

イメージをあげるための施策などは行いましたか?

社内用のサイトを作りました。可能な業務の可視化を行い、受託条件を提示します。条件については、「どれくらいで納品できるのか」「どのくらいのボリュームから受託してもらえるのか」「どのくらいの金額でできるのか」など、ひと目見てわかるように工夫しました。

加えて、業務を募集している件を社内のチャットツールで定期的に発信しています。もともと仕事を委託してくれている部署については、月に1度のミーティングを行い、今受託している業務に対しての振り返りを行い、業務改善の話を積極的にもちかけます。そこから口コミも広がっていき、結果的にコツコツやってきたことが信頼にも繋がり、業務も増えました。

業務内容の画像

雇用をするうえで、苦労したことや問題点などはありましたか?

一番最初は「配慮」について苦戦しました。合理的配慮を知らない状態でやってたので、いろいろな配慮を汲んだ所、よくない組織になってしまいました。

実際にあって求められた配慮ですが、「人前に出たくない」とか「あの上司と仕事したくありません」や「年末調整が理解できないので代わりにやってください」といったことをすべて受けてしまっていたので、管理者の時間がかなり膨れ上がってしまいました。

解決策としては、私と管理者同士で話し合い配慮に関する方針を決めました。それだけでは知識的に不足している部分も多かったので、支援者さんを交えるなどして、本人の成長に繋がらなくなる配慮はできるかぎりやらず、本人の力で実行してもらう方針を決め直しました。

当初の採用基準について教えて下さい。

当初は、年齢制限は特に設けず、目や耳の障がい以外の知的・身体・精神・発達障害の方を対象に採用を行っていました。採用水準ですが、タイピングがどれだけできるかを測っています。「ルビ入力」といった、商品のふりがなを入力する業務をお願いすることが多かったので、タイピング速度が必要です。そのため、面接中にタイピングテストを行い、レベルを確認します。

他には、家の仕事環境が整っているか、ネット回線が通っているか・光回線が通っているかどうかは必須条件にし、障がい者雇用の手帳も必須条件に入れていました。今思い返すと、タイピングソフトでスキルを測るのは適切ではなかったなと反省しています。現在は、スプレッドシートでIDに紐づくデータを穴埋めする、関数を用いれば簡単にできる作業をテストにしています。

2015年までは、知的障がい者も採用していましたが、対象外としました。理由としては、言語的な部分で文字によるコミュニケーションが難しい方が多かったためです。

最後に、雇用してよかったこと、今後について教えて下さい。

障がいを持っている人でも、必ず会社の戦力になる確信を得られたことです。障がい者と関わったことのない人は、仕事ができないイメージを持っていたりと、偏見を感じました。私自身も管理者をしていたので、同じ目に遭ったことがありますが、「何ができるの?」と言われたことも少なくありません。その第一関門を一緒に突破してきた歴史を作れたと思っています。健常者と変わらない仕事内容で、事業に貢献できることを証明したい気持ちも大きくなりました。

現在は、その部分がしっかりと証明できていると思っています。私自身の部署のPLも黒字になり、「ビジネスクリエーション部がないと仕事が回らない」と言ってくださる部署も増えました。それが自信や確信にも繋がったので、やってよかったなと思っています。

今後の展望は、障がい者雇用において日本を代表するような存在として、「事業に貢献する障がい者雇用といえばDMM」といったフレーズが生まれるような状態を作りたいです。まだ特に決めているものはありませんが、ワークリアさんと同じ想いを持つ企業も多いと思いますので、他の企業とも定期的にディスカッションを行い、日本一を目指せるような指針を作っていきたいです。

ワークリアとは

ワークリアは、障がい者専門の人材紹介サービスと障がい者雇用にまつわるコンサルティングサービスを運営しております。
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