障がい者雇用という枠組みにとらわれず、雇用を拡大する
2024/02/15
令和4年度に東京都エクセレントカンパニー賞を受賞されているASKUL LOGIST株式会社。障がい者雇用という枠組みにとらわれずに採用、育成、管理をし雇用を拡大させています。障がい者雇用開始当初より、採用、仕組みや体制をつくり雇用を拡大させたASKUL LOGIST株式会社社の坂井さんにインタビューしました。
ASKUL LOGIST株式会社
ASKUL LOGIST株式会社は、アスクル株式会社の100%子会社。 事業所向け通販サイト「ASKUL」、及び個人向け通販サイト「LOHACO」の物流・配送機能を担う。
坂井さん
ASKUL LOGIST株式会社の人事総務部人材開発課課長。同社福岡物流センターの副センター長時代より障がい者の採用に携わり、雇用体制の仕組みを作り上げている。
障がい者雇用を始めたきっかけはなんですか?
労働人口が減少している昨今、将来的に物流センターで働く選択をする方が減ると考え、会社全体で障がい者雇用を推進していく方向性になりました。
社員数が多くなった2011年のタイミングで本部から全国の物流センターへ障がい者を採用する方針となり、拠点ごとに雇用を開始していきました。
障がい者雇用の方針を教えてください。
障がい者雇用という枠組みとして捉えるのではなく、雇用全般としてどうありたいかを考えて進めていきました。なので、当社の場合、障害がない方と同様の仕事をしてもらっています。評価や給与、異動や昇格の機会、指導、環境を障害の有無で変えずに平等にしています。
障がい者を雇用する方針になった際、福岡の物流センターではまず身体障がい者の方を採用できたのですが、理由を偽り退職されてしまいました。その出来事から、ただ採用をするだけでいいという考え方が誤っていると気づき、障がい者の方を雇用できる仕組みを創ろうと考えました。
それからは、既に障がい者雇用をしている企業へ見学にまわっていましたが、模範として障がい者雇用ができている企業が当時は無いと感じ、当社は真逆のことを行おうと決心しました。
どのようにして方針を決めたのでしょうか。
問題を整理したところ、知識量と考え方、作業環境に問題があると考えました。障がい者雇用について知識がない状態、ただ雇用すれば良いという考え方ではいけない。障がいがあると作業がしづらい環境が問題で、これらを解決すべく行動に移しました。
まず、知識が無いという問題については、特別支援学校へ見学に行き、実習に参加しました。障がい者雇用は雇用するだけではなく、「戦力化出来るしくみづくり」という考え方に転換し特別支援学校への見学や実習に加え、支援機関に相談したり、他企業のセミナーや見学に行くなどして、自社の雇用モデルを確立しました。
他の企業へ見学へ行くと、限られた仕事で短時間勤務の方が多いように思いました。そこで、もっと活き活きと働けるよう、障がいがある人という枠組みではなくてすべての人と同じ働き方ができないかと考え、方針が決定していきました。
そして、作業環境の解消としては、障がいのある方でも作業しやすいように、ピッキングする商品、約20000件の商品管理方法の改善を実施しました。
採用していくうえで工夫したことはありますか?
実習(インターンシップ)に参加された候補者からの応募が多いのですが、体制作りを工夫しました。当社は、実習を3回にわたって行っています。1回目の実習はピッキング(庫内の集品作業)を中心に経験してもらう、2回目はピッキング以外の業務を経験してもらう、というように異なる業務を3回経験してもらっています。実習後は毎回、個別でフィードバックを行い、課題を明確にし次の行動を概念化できる状態にしています。就職する前にこのような経験をすることで、本人も緊張感を持って取り組んでくれるので成長促進ができます。異なる内容の実習を3回行うこともポイントなのではないかと思います。
雇用が拡大する中で起こった問題はありますか?
障がい特性的に本人にとって恐怖に感じること、苦手なことを最初から全て把握し、配慮することが難しく、いくつかトラブルはありました。例えば、過去に自宅で”のり”を誤飲をしてしまった経験からのりに対して恐怖心を抱いてしまう社員がいたのですが、業務上のりを使う必要があるという問題がありました。
そのような問題はどのように対処していったのでしょうか?
連携している機関に都度相談を持ちかけ解決しています。この場合は、ご家族に相談をしたところ対処してもらうことができました。ご家庭で実際にのりを使用し慣れてもらうことで恐怖心を取り除くことができました。ご家族に相談をしても解決しなかったときは支援機関に、支援機関でも解決できなかった場合は学校に相談をするというように、家族や支援機関、学校、医療機関等、周囲と連携が取れるように関係構築をしています。
連携機関にすぐに相談ができるように、本人だけでなく学校関係者、ご家族、支援機関に入社前説明会や入社式に参加いただくようにしました。また、入社後は家族の会というものを3か月に1度開催し、状況の共有を行っています。このような取り組みから、社員に何かあったときには、お互いに相談しやすい体制を作ることができました。
最後に、障がい者雇用をしてよかった点や今後の展望を教えてください。
リーダーのマネジメントスキルが上がった点だと思います。障がいがある社員を指導するとなるとより個別化を図る必要があり、柔軟性を持って対応することが求められるので、リーダーの力量は上がりやすいと感じました。人によっては、いかに定量的にものごとを把握し、的確に説明や指導をすることも重要です。また、コミュニケーションの量を増やし、質も良くする必要があることから職場の雰囲気が良くなったと感じています。
今後の展望としては、社会全体の障がい者の労働者数を増やすことに貢献したいと思っています。当社で雇用できる人数も限りがあるので、他企業へも障がい者雇用についての考え方や知識を広めていく機会を積極的に作っていこうと考えています。
ワークリアとは
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