障がい者雇用を加速させ、多様な業務の創出と雇用形態の確立を成功

障がい者雇用を加速させ、多様な業務の創出と雇用形態の確立を成功

法人向け事業パートナーとして、売上拡大とコスト最適化を総合的かつグローバルに支援するアウトソーシングサービスを提供しているトランスコスモス株式会社。会社の方針に基づいて障がい者雇用を推し進め、地道な取り組みにより障がい者雇用数および切り出し業務の増加、リモートワーク等の新たな雇用形態の導入に成功しています。
今回は、障がい者雇用部門を担当されている横井山さんにお話をお伺いしました。

トランスコスモス株式会社

CXサービス、BPOサービスを展開し、企業の事業パートナーとして売上拡大とコスト最適化を総合的かつグローバルに支援するアウトソーシングサービスを提供しています。
コールセンターサービスとインターネット広告やWebプロモーションサービスの融合によって新たなマーケティング戦略を提案するほか、企業内間接業務/IT活用促進/企業内システム開発・導入・運用/設計業務の領域では「ビジネスプロセス」を改善し、効果的に運用することで企業経営の効率化を支援しています。

横井山さん

コーポレート統括 管理本部ノーマライゼーション推進統括部統括部長。
前職はシステムエンジニア。障がい者のウェブの制作チーム立ち上げに貢献し、その後、障がい者雇用を促進させる際の企画、運営、管理を担当。

障がい者雇用を本格的に始めたきっかけはありますか?

当初は、総務部や法務部を管轄している管理本部の中にある管理サポート課が障がい者雇用を担当していました。
それだけでは、法定雇用率を達成することができず、行政指導を受けたことをきっかけに特例子会社を立ち上げました。しかし特例子会社だけでの雇用では限界があり、本社で障がい者の新卒採用や中途採用を開始しました。
採用数増加と共に組織が拡大し、現在のノーマライゼーション推進統括部という障がい者雇用専門の部門へと変化していきました。

始めた当初の方針はどのようなものだったのでしょうか。

人数合わせの雇用ではなく、障がいの有無を問わず活躍してもらおうという方針でした。最初は「どこまでできるのだろう」という疑問の声も上がりましたが、「企業の社会的責任として障がい者雇用を促進していこう」という考えでプロジェクトを立ち上げました。この方針は当時の経営層の影響が大きいと思います。

どのように採用を進めていったのかを教えてください。

新卒採用を開始した当初は、当社と関係の深い大学から、聴覚に障がいがある学生が入社することが多かったです。そこから、大学や専門学校への学校訪問、インターンシップ、合同面接会などの採用活動を進めていきました。
学校訪問をはじめた当初は、障がい者採用での学校訪問は珍しく、お断りされることもありましたが、今は学校側も以前と比べて、障がいのある方の就職活動に力を入れているので、かなり前向きに捉えていただけます。新卒の方に大学のキャリアセンターから応募していただくことも増えてきました。

中途採用では就労移行支援事業所を経由して入社していただける方が多いので、支援者向けの説明会や社内ツアーを行っていました。業務内容や障がいへのサポート体制を支援者側に知ってもらうことで、当社にマッチする利用者を紹介していただくことが狙いです。
そのほかにも、利用者向けのセミナーや研修等も行っています。

障がい者雇用を進めていくうえで起こった問題はありますか?

障がい者雇用をはじめた当初は、社内で障がいがある方の業務を創出することに苦労しました。社内のさまざまな部署を回って社内営業をしましたが、ハンディキャップがある方へどの程度の仕事を任せられるのかわからなかったため、仕事が回ってくることが少なかったです。
その他にも、障がいがあるスタッフが増えてくると、私の部署だけでは業務を創出するのが難しくなってきたため、社内派遣のような形で現場部門へ常駐して健常者の社員と一緒に働いてもらうようになりました。その際、常駐先の部署に障がいがある方が一人だけだと孤独を感じたり、聴覚に障がいがある方はコミュニケーションの面でうまくいかないこともあり、私の部署に戻りたいという声が出ることもありました。
受入れ先の部署の方も、自分の業務を行いながら、障がいのある方のフォローをする必要があり、負担がかかってしまう場合もあったようです。

(横井山さん)の画像

(横井山さん)

仕事を創出するためにどのような取り組みを行いましたか?

まず、社内で業務を創出するために、健常者の社員と全く同じ業務を障がいがある社員にも対応してもらい、生産性や品質面において、健常者の社員と同等に業務対応できる方が多くいることを証明し、社内各部門へアピールしました。
また、社内の他の部署でもあまり対応していない翻訳業務や映像制作など、専門性の高い業務チームを立ち上げて差別化を図ったことも、社内に広く浸透した一つの要因だと考えています。仕組みとして変えたところは、各事業部に対する人件費の配分です。当初は、業務の依頼元部門へ、障がい者の社員が稼働した分の人件費をチャージしていたのですが、障がい者雇用は全社レベルでの取り組みであるため、障がいがある社員の人件費を各事業部の従業員数に応じて負担していただくルールに変更しました。そうすることで、各事業部も更に障がいがある社員の活用を進める意識が高まり、仕事の切り出しが加速しました。

障がいをお持ちの方が各事業部で活躍してもらうために行った取り組みはどのようなものですか?

まず、現場での孤独感をなくすために、障がいがある方を複数人で配属したり、常駐先部門で一緒に働く周りのスタッフへ障がい特性や配慮事項を事前に説明して理解してもらうようにしました。他部門へ常駐する際には、常駐先部門のマネジャーとの面談の場を設け、そこで双方が納得したうえで配属するという形をとっています。配属後も何か問題があれば、障がい者サポートの専門スタッフがいる私の部署へ相談してもらうようにしています。
障がいに対する理解を深めてもらうために、現場の社員向けにEラーニングによる研修や勉強会も実施しています。

また、現場で業務を問題なく行える人材の育成を行いました。現場ではスピード感が求められたり残業があったりするので、環境が変わって体調を崩してしまう可能性があります。
そこで、まずは私の部署の中で現場と同じ内容の業務を1年ほど対応してもらい、業務を覚えてもらったうえで、問題ないと判断した人から現場に配属するようにしています。それでも障がいの特性上、現場の環境に慣れることができず、業務遂行が難しい場合には、再び私の部署に戻ってきていただくこともできます。

そのほかに障がいをお持ちの方を職場に定着させるための取り組みや制度はありますか?

精神に障がいがある社員の中には、気分の落ち込みなどで勤怠が不安定になってしまう方もいます。そのため、精神障保健福祉士の社員が定期面談等を行い、安定的に就労できるようにサポート体制を整えました。
また、初めからフルタイムで働くことが難しい方には、その方に合わせた勤務時間を設定して、徐々にフルタイムに近づけています。時間をフレキシブルに変えて、負担が大きくならないように心掛けています。

最後に、障がい者雇用の今後の展望を教えてください。

障がいをお持ちの方が成果を出して活躍できることが広まり、仕事が増えていったことはとても嬉しく思います。評価制度も、障がい特性上は達成が難しい項目を除いて健常者の方と同じ内容になっており、毎年正社員に登用される方も数名います。中には、昇進し、部長職や課長職を担っている方もいます。
障がいがある社員の中から管理職になる方も増えてきているので、ゆくゆくは私の部署の責任者になって、組織を牽引していただきたいと思っています。
ただ、SDGsの観点からいうと、このような部署が独立していること自体がおかしいのではないかという声もあるかもしれません。
もちろん、現場で働ける方は現場部門へ異動して健常者の社員と一緒に働くのが自然な姿だとは思いますが、まずは障がいに関する専門性の高い部署で慣れていただかなければならない方も多くいるので、そのためには私の部署は必要だと思います。障がいをお持ちの方を最も理解できている部署が、障がい者雇用の未来を牽引していくべきだと思っています。

ワークリアとは

ワークリアは、障がい者専門の人材紹介サービスと障がい者雇用にまつわるコンサルティングサービスを運営しております。
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