一店舗一人以上”の採用で障がい者雇用を拡大させる

一店舗一人以上”の採用で障がい者雇用を拡大させる

会社の「行動指針」の中に”多様性の容認”が位置付けられ、設立当初より障がいの有無で社員を分けることなく雇用を行っている株式会社フォンス。会社の規模が拡大するにつれて、どのように障がい者雇用を推進していったのでしょうか。

株式会社フォンス

日本の食文化、とりわけ信州・長野県産の食材や調味料を使った和食をメインに出店を広げ、現在では洋食レストランやベーカリーなどの飲食業態のほか、ホテル・小売店など国内外におよそ80拠点を展開。料理・空間(デザイン)・サービスの3点を重要視し“お店づくり”を行っています。
FONZ(フォンス)という言葉には「泉」「源泉」という意味があり、「物事の始まりを作る」という思いが込められています。

小山さん(写真右)

株式会社フォンスの創業者であり代表取締役社長。2000年に軽井沢にて株式会社フォンスを設立。
"多様性の容認"を大切にし、設立当初より障がい有無を意識することなく幅広く雇用を行っている。

櫻庭さん(写真左)

大学卒業後、約20年間に渡り一貫して障がい者支援職(教育・福祉・司法・産業・医療各分野)に従事。株式会社フォンスでは、障がい者雇用専任として、採用、定着、制度、仕組みづくりまでを一気通貫して担当。

障がい者雇用を始めたきっかけはありますか?

株式会社フォンスでは、設立当初より障がい者雇用を行っています。当初は、障がいのある方向け専用の求人を出すことはしておらず、意識し過ぎることなく各店舗で雇用をしていました。採用した方の中に障がい者手帳をお持ちの方がいて、結果的に障がい者雇用が出来ているという状況でした。
会社の「行動指針」の中にも”多様性の容認”を位置付けており、規模が大きくなるにつれ、法定雇用率を達成することにも自然と注力するようになりました。

どのように障がい者雇用を推進していったのでしょうか。

当初より障がいのある方、障がいのない方を分けずに店舗で雇用していますが、会社の規模が大きくなるにつれて、障がいのある従業員の障がい種、障がい程度も多種多様になっていきました。そこで、当社なりの障がい者雇用の目的や方針を社内で示したほうが、誰もが働きやすい環境を作ることができると考えました。

また、障がい者雇用関連の法律やルールもより複雑になっていくなかで、それらに対応していくために相当のノウハウ、専門性も必要になっていきました。そのような経緯から、採用から定着、制度作りまでを一気通貫で担う障がい者雇用担当を専任として新たに登用することになりました。

当社では「料理・空間・サービス」を店舗運営において最も大切にしています。ジョブクラフティングの概念に通じますが、店舗で勤務することでそれらを実際に体感してもらい、「お客様の笑顔を間近でみてもらうこと」により仕事のやりがいを再定義してもらったり、更なるやりがいやパフォーマンスの向上に繋げてほしいという思いがあります。

一方で、対人緊張、不安が強い場合やお客様に合わせた業務速度での対応が難しい場合は、店頭勤務ではなくセントラルキッチンやユーティリティ部門等のバックオフィスで活躍してもらっていますが、福利厚生の一環として「社内食事会制度」を活用し、「料理・空間・サービス」を体感できる機会を設けています。

どのように雇用数を増やしていったのでしょうか。

採用における流入経路の拡大を計りました。ハローワーク、人材紹介サービスの利用、就労移行支援機関や障がい者の職業能力開発校へアプローチし応募をもらえる体制を強固にしました。
アプローチ内容としては、個別で訪問し支援員の方向けに求人の説明、利用者に向けての説明会を行いました。また、ハローワーク主催の合同企業説明会や面接会にも参加し、応募獲得に繋げています。就労移行支援機関や福祉施設へのアプローチは、お互いを理解し合う信頼関係が大事だと考えているので、オンラインではなくオフラインでの対応の方が結果に繋がりやすいのではないかと思っています。
 

 

障がい者雇用をしていくなかで起きた問題はありますか?

当初は特段の障がい、障がい者雇用の知識や経験があったわけではなかったので、相互理解や相互調整という合理的配慮の提供過剰が生じ、障がい者本人というよりも周りのスタッフが疲弊してしまう状況を作ってしまいました。その原因は障がい者雇用のノウハウ不足の状況で、本人の希望する配慮事項をそのまま受け入れていたためだと思います。

どのように問題を乗り越えたのでしょうか。

社外の関係機関との連携を強化し解決に向けて行動に移しました。具体的にはハローワーク、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所にフォローの仕方のヒアリングを行いました。
また、各地に展開している求人票の合理的配慮の例を記載したり、労働条件を具体的に載せたり、求人内容の見せ方を変更したうえで応募を集めました。
また、実習ありきの選考を実施し、本人の希望する勤務形態で働いていただいたうえで選考をする体制も取りいれました。

雇用後に感じた障がい者雇用のメリットはありますか?

戦力化・業務改善・業務効率といった三つの観点において、実際の現場店舗からメリットにあてはまる意見をもらいました。

まず戦力化という観点では、「仕事ぶりはゆっくりであるが、丁寧なので間違いがなく信頼できる」といったメリットがあります。特に入社当初は緊張感や不安感が高まり、本来の業務速度を出すことが難しい場合が少なくありませんが、一方では障がい特性やパーソナリティが相まって精度の高いパフォーマンスを発揮するケースも多いです。時間は多少かかるかもしれませんが、徐々に環境に慣れていくなかで業務速度は上がってくるので、その点を考慮したうえで業務計画を立てています。

業務改善という観点では、「業務を“見える化”することにより商品クオリティとコストの安定化に繋がった」ということです。
例えば、サラダの盛りつけは一定のグラム量が決まっていますが、障がいの有無に問わず慣れていない場合や慣れていてもピークタイム時には盛り付けの量感覚に差が生じる可能性があります。

業務の可視化や定量を明確にすることで、お客様へ提供するサービスのクオリティを担保できたり、原価率の安定を図れたりすることに繋がりました。

それに紐づくものですが、業務効率という観点では、「これまで属人化していた業務について誰でも業務ができるよう工夫するようになった」ことです。業務上、毎日対応することをホワイトボードに文字で明記することで、仕組みとして属人化や特定のスタッフへの負担の偏りが生じないよう改善することができました。

他社と差別化できる取り組みはありますか?

”多様な働き方”を実現しているのは他社と差別化できる取り組みのひとつと考えています。
仕事ありきではなく“人ありき”を大切にしているので、本人が希望する就労志向性(日労働時間、週労働日数)に寄せた業務設計を行っています。
当社にはフルタイムで働いているスタッフも当然いますが、週所定労働時間が10時間以下のスタッフもいます。

今後の展望を教えてください。

当社の障がい者雇用の目的は国が掲げる“共生社会”にも通じるものと考えています。法定雇用率の達成は当社の障がい者雇用の目的を達成するための指標の1つと捉えているので、達成することで満足することなく、今後も積極的に障がい者雇用の推進をしていきます。

また、なんでもできそうな人だけを採用するのではなく、できる業務が限られているかもしれないけれど、相互理解、相互調整を図りながら、できる部分を組み合わせてひとつの大きい仕事で活躍できるようにすることがダイバーシティーマネジメントだと考えています。

究極的には”障がい者雇用”という言葉がなくなることが、当社の障がい者雇用の目的の達成の証と言えるのかもしれません。
 

 

ワークリアとは

ワークリアは、障がい者専門の人材紹介サービスと障がい者雇用にまつわるコンサルティングサービスを運営しております。
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