障がいの有無問わず、戦力としての雇用を拡大する
2024/09/25
住友生命グループの特例子会社である株式会社スミセイハーモニーは、設立当初から「障がいのある社員も本業の戦力となってほしい」という強い思いを持ち続け、それを実現しながら雇用を拡大しています。今回は、代表取締役社長の落合様にインタビューしました。
住友生命グループ
住友生命グループは、住友生命保険相互会社を中核とし、複数の関連会社や子会社を通じて、生命保険および保険関連事業、資産運用、年金業務などの金融サービスを提供しています。
株式会社スミセイハーモニー
株式会社スミセイハーモニーは、住友生命グループが障がい者の安定的な雇用を目的に設立した特例子会社です。現在、従業員数は337名で、そのうち障がい者は279名です。スミセイハーモニーでは、生命保険契約の維持・管理業務を担当しています。お客様から提出される保険に関する書類の受付、イメージデータ化、管理を行う極めて重要な基幹業務を担っています。
落合さん
株式会社スミセイハーモニー代表取締役社長。住友生命保険相互会社より2年前に就任。
特例子会社設立の背景を教えてください。
当社は、2001年に設立され、今年で24年目を迎えます。設立の背景には、法定雇用率の達成という重要な要素がありました。
住友生命保険相互会社本体でも障がい者の雇用を進めていましたが、法定雇用率の上昇を背景に、より障がい者にとって働きやすい環境を整える必要がありました。そのため特例子会社を設立し、雇用することで、より配慮の行き届いた職場を提供できると考えました。
貴社の障がい者雇用の方針は何ですか?
障がいのある方々にも、本業の戦力として活躍してほしいと強く思っています。ただ雇用のために創出した業務を任せるのではなく、本業に関わる業務を担い、実際に戦力となってもらうことが当初からの方針です。
障がい者雇用を進めていく中で起きた問題はありますか?
デジタル化により業務の削減が進む一方で、障がいのある社員が増加し、業務の確保が課題となりました。従来の業務内容は、職場のグループごとに全員が同じ業務を行うものでした。業務の選定においては、長期的に継続して受託できること、大量かつ画一的で繁閑が少ないこと、管理者の目が届きやすく安心できる自所属での作業であることを基準として対応していました。
どのような取り組みで業務を確保していったのでしょうか。
様々な種類の業務を請け負い、社員の特性や得意・不得意を見極めて、適性のある社員が担当する形式へと変更しました。例えば、委託元の要請に応じたスポット業務(年1回等の単発業務)、委託元へ出向して行う業務、ミスが発生した際に影響が大きい情報処理業務などがあります。これらはいずれもトライアルとして請け負い、段階的に業務ボリュームを上げていきました。また、期間が決まっている業務の場合は、他の業務との組み合わせで繁閑の調整を行っています。
他にも、採用に関する課題として、これ以上の雇用の拡大が難しいという問題が浮上しました。
その中でどのように雇用を拡大していったのでしょうか。
多くの精神発達障がいの方を安定して雇用することをミッションに掲げ、採用活動を行いました。
精神発達障がいの方の採用数を増やし、雇用体制を整えることが大きな転換点となりました。2018年4月から精神障がい者の雇用が義務化されたことを受け、当社も積極的に採用を進めました。
また、ダイバーシティ推進室という専門的な知識を持つ支援員で構成される組織を設置しました。専門的な知識を持つ人と共に雇用を進めなければ、採用しても定着しないと考えたためです。
ダイバーシティ推進室には14名の専門支援員が在籍しています。東京オフィスと高松オフィスにも1名ずつ配属されています。これらの専門支援員は、室長以下、精神保健福祉士、公認心理士、臨床心理士、社会福祉士、キャリアコンサルタント、介護福祉士、シニア産業カウンセラー、手話通訳士など多様な資格を有し、障がい者雇用・定着支援の経験を持つメンバーで構成されています。
ダイバーシティ推進室のミッションは以下の通りです。
・社員の定着支援
・社員からの各種相談への対応
・社員の健康管理および合理的配慮への助言
・社員の実習、教育のサポート
さらに、14名の業務アドバイザー兼支援員が在籍しており、東京オフィスと高松オフィスにも2名ずつ配置されています。これらのアドバイザーは主に住友生命からの出向者で、生命保険業務のプロフェッショナルです。彼らの主なミッションは以下の通りです。
・業務指導
・定着支援への貢献
これらの専門支援員と業務アドバイザーが連携し、社員が安心して働ける環境を整備しています。ダイバーシティ推進室は、多様な視点と専門知識を持つメンバーが集い、社員一人ひとりのニーズに応じた支援を提供することで、企業全体の活力と成長を支えています。
専門職の方を雇用せずとも社員定着のために実施できる対策はありますか。
障がい者自身が自己理解、自己受容し、できないことを自己発信できることが重要です。そのため、採用面接では、自分自身の障がいについてどれだけ理解しているかを重視しています。精神障がい・発達障がいの方は、一見して障がいがあるようには見えないため、何ができないか、どのような配慮が必要かが分かりづらいことがあります。
一緒に働く環境において、障がい者同士がお互いに理解し、配慮し合える体制を作ることも大切です。例えば、当社では年2回のグループ内自己紹介会を実施し、お互いの障がいや特徴、配慮してほしいことを自己発信してもらっています。この自己紹介会はセンシティブな内容を含むため任意参加としていますが、参加しない人は少数です。
実際に自己紹介会を見ていると、障がいの有無に関係なく、健常者でも実施すると良いのではないかと感じました。お互いの強みや弱みを共有することで、業務がより円滑に進むのではないかと思います。
採用面で他に工夫したことはありますか?
地方への支店展開を行い、採用を進めました。大阪に本店を構えている一方で、香川県高松市にオフィスを設置しました。高松への展開は、障がい者の就業状況と特例子会社の数を考慮して決定しました。
他社と差別化できる貴社の取り組みはありますか?
当社では、障がい者の役職者登用制度を整備しています。特性的にマネジメントが苦手な方でもキャリアアップができるよう、プレイヤーとしての基準も設けました。この制度では、マネジメントからプレイヤー、プレイヤーからマネジメントへの転換も可能としています。
障がい者雇用を推進するメリットや良かったことはありますか?
障がいのない社員と同様に、住友生命グループの戦力となっていることです。障がいのある方々は、保険に関する書類の受付、スキャニング、書類管理を担当しており、住友生命グループにとって無くてはならない存在です。
また、真面目で純粋に仕事に取り組む姿に心洗われます。多くの社員が苦労を積んでいますが、その中で自分が組織の一員として立派に役目を果たしている社員が生き生きと働いてくれることが何よりの喜びです。
貴社の今後の展望を教えてください。
地方に在住している方には、働く能力も意思もあるのに働く場所がない方が多いと考えています。そのため、フルリモート勤務が可能な雇用形態を導入し、そのような方々も積極的に雇用していきたいと思っています。
地元の支援機関に通所し、支援員と繋がっている方を雇用することで、当社の社員が直接管理やフォローができなくても、その支援員と連携して安定した雇用を実現したいと考えています。
ワークリアとは
ワークリアは、障がい者専門の人材紹介サービスと障がい者雇用にまつわるコンサルティングサービスを運営しております。
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