2021.10.29
2021.10.29
障がい者雇用を進めるにあたり、避けては通れないのが「法定雇用率」。「実際のところ、何人雇えばいいの?」「満たせなかった場合のペナルティは?」など、言葉は知っていても実はあまり理解できていないという方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、法定雇用率の算出方法から今後の展望まで、知っておきたい基礎知識をご紹介します。
目次
障害者雇用促進法によって定められた、常用労働者のうち雇用しなければならない障がい者の割合を「法定雇用率」といいます。一定数以上の労働者を雇用しているすべての事業主には障がい者雇用率達成義務が課されており、満たしていない場合にはペナルティが課されます。
日本では憲法に基づく基本的人権の一つとして「職業選択の自由」が保障されていますが、雇用主にも採用方針・採用基準・採否の決定といった「採用の自由」が認められています。しかし、採用の自由を無制限に認めてしまうと、労働市場において障がいのある人が不利になってしまう可能性があります。それを防ぎ、障がい者の雇用の権利を保障するため、法定雇用率が定められました。
2021年3月1日、厚生労働省の発表で法定雇用率が引き上げられ、現在は以下の通りです。
また、障がい者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、従業員45.5人以上から43.5人以上に広がりました。
法定雇用率は1960年、身体障害者雇用促進法で努力義務として採用されたのが始まりです。1976年の法改正により義務化され、1.5%と定められました。その後段階的に引き上げられ、現在の数値に至ります。
また、2018年4月の改正により、それまで身体障がい者・知的障がい者のみが対象であった雇用義務の対象に、精神障がい者が加わりました。
実際に雇用する必要のある障がい者数は、常用労働者数×法定雇用率(小数点以下切り捨て)で算出できます。
常用労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上で、1年を超えて雇用される見込みがある、または1年を超えて雇用されている人のことを指します。
(参照:厚生労働省『障害者雇用のご案内(p.4)』)
障がい者雇用率を計算する際は、原則として常用労働者の人数をそのままカウントします。しかし、障がい区分や勤務形態によってはカウントの仕方が異なる場合があります。
・ダブルカウント
「重度身体障がい者(身体障害者手帳1級・2級)」と「重度知的障がい者(療育手帳A)」の場合、1人の障がい者を2人分としてカウントします。
・0.5カウント
「短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)」の場合、1人の障がい者を0.5人分としてカウントします。
※ただし、ダブルカウントの対象となる手帳を所持している場合は、短時間労働者でも1人分としてカウントします。
精神障がい者については、どこからが重度かが定義されていないため、ダブルカウントは適用されません。ただし、短時間労働者でも、下記のいずれかに当てはまる場合は1人分としてカウントします。
・新規雇入れから3年以内、または精神障害者手帳取得から3年以内の場合
・2023年3月31日までに雇入れ、精神障害者保健福祉手帳を取得した場合
表にまとめると以下のようになります。
(出典:厚生労働省『障害者雇用率制度について』)
障がい者雇用義務のある企業は、毎年6月1日時点の雇用状況を報告する必要があります。実雇用率が法定雇用率を下回った場合には、下記のペナルティが課されます。
障害者雇用納付金制度に基づき、不足1人あたり月額5万円を納付する必要があります。納付対象は常用雇用労働者が101人以上の事業主です。
この納付金は「罰金」と認識されがちですが、法定雇用率を達成している事業主と未達成の事業主の間のコスト面の不均衡を調整することを目的としたものです。雇用率を上回る障がい者を雇用している事業主に対して支払われる障害者雇用調整金や報奨金、障がい者雇用促進のための各種助成金に活用されます。
ハローワークにより、翌年1月から2年間の雇入れ計画の作成命令が通達されます。実施状況が悪い場合は計画の適正実施勧告がなされ、計画期間終了後に雇用状況が改善されていないと判断された場合は公表前提の特別指導が行われます。それでもなお改善されない場合は社名が公表されます。
(参照:厚生労働省『雇用率達成指導の流れ』)
厚生労働省発表の『令和2年 障害者雇用状況の集計結果(p.4)』によると、民間企業における実雇用率は2.15%と、雇用人数・実雇用率ともに過去最高を更新しました。しかし、法定雇用率達成割合は48.6%と、依然半数以下にとどまっています。
法定雇用率は原則として5年ごとに見直しが行われます。労働政策審議会障害者雇用分科会において、2023年以降に2.5%程度への引き上げも示唆されています。
今後も継続的な引き上げが予想されるため、それを前提とした雇用体制を構築していく必要があります。
まだまだ進んでいるとはいえない日本の障がい者雇用。法定雇用率のさらなる引き上げによって、雇用の必要性は年々増しています。まずは自社の雇用率や必要な雇用人数を把握し、雇用を検討してみてはいかがでしょうか。
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