高次脳機能障害とは?雇用する上で知っておくべき、障がい特性と対処方法

高次脳機能障害とは?雇用する上で知っておくべき、障がい特性と対処方法

高次脳機能障害について知りたい方に向け、具体的な症状や職場での配慮の仕方などをご紹介。高次脳機能障害は脳の損傷が原因となり発症する障がいです。外見からは症状がわかりにくいため、周囲から理解されにくい傾向にあります。

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、事故や病気などで脳に傷ができたことで、これまでになかった症状が現れ、社会生活に支障をきたす障がいです。「怒りっぽくなった」「集中できなくなった」「物忘れが激しくなった」など、人によって異なる症状が現れます。
また、事故や病気から何年か経った後に障がいが発症することも。本人が障がいを認めるまで時間がかかるケースもあるため、まずは周囲が症状について理解しておけると良いでしょう。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害の症状は、一人ひとり異なります。症状や損傷部位によって次のように区分されるため、参考にしてください。

記憶障害

以前の記憶を思い出せなかったり、新しいことを覚えられなくなったりするなど、記憶が抜け落ちる障がいです。具体例として、以下のようなものがあります。

・物を置いた場所を忘れる
・同じ話や質問を繰り返す
・約束を守れない
・学んだ内容をすぐ忘れる

なお、記憶障害は、視床や前脳基底部、側頭葉内側面(海馬)などの損傷が原因で発症します。

注意障害

ぼーっとしたり、動作の同時進行が困難になったりするなど、注意力や集中力が低下する障がいです。具体例として、以下のようなものがあります。

・すぐに気が散る
・ミスが多い
・二つのことを同時に行えない
・反応が遅い

注意障害は、右半球や広範囲の脳損傷などの損傷が原因で発症します。

遂行機能障害

整理したり、計画を立てたりするなど、段取りを付けることが困難になる障がいです。具体例として、以下のような症状があります。

・計画を立てて物事を実行することが難しい
・決まっている時間に間に合わない
・指示されないと行動を起こせない
・優先順位を付けることが苦手

遂行機能障害は、前頭葉の損傷が原因で発症します。

社会的行動障害

泣き出したり、暴力をふるったりするなど、自分の感情や行動のコントロールが困難になる障がいです。具体例として、以下のような症状があります。

・思い通りにならないと、暴力をふるう
・急に泣き出したり、怒り出したりする
・何でも無制限に欲しがる
・一つのことに固執する

社会的行動障害に関しても、前頭葉の損傷が原因で発症します。

病識欠落

自分ができなくなっていることを指摘されても、自覚が困難な障がいです。具体例として、以下のような症状があります。

・麻痺で手を動かせないが、動かせると言う
・足が動かせないが、歩けると思って転倒する
・障がいがあるが、自覚ができずに障がいはないと言う

病識欠落は、前頭葉の損傷が原因で発症します。

失行症

運動器官に問題がないにもかかわらず、手慣れた動作を行うことが困難になる障がいです。具体例として、以下のような症状があります。

・手を振る、字を書くなどの習慣的な動きが困難
・使い慣れた道具をうまく使えない
・動きがぎこちない

失行症は、左半球頭頂葉の損傷が原因で発症します。

半側空間無視

主に左右どちらかの空間を認識できず、刺激や状況に対して反応が困難になる障がい。一般的には、左側が認識できない方が多いようです。具体例として、以下のような症状があります。

・左側の肩だけよくぶつける
・左側の食事だけ残す
・右ばかり向いている

半側空間無視は、主に右半球中心溝より後方(右頭頂葉)の損傷が原因で発症します。

失認症

感覚に問題はないにもかかわらず、見たものや聞いたもの、触ったものを認知することが困難になる障がいです。具体例として、以下のような症状があります。

・見ているものが何かは理解できても、名前や使い方がわからない
・顔を見ただけでは誰かわからないが、声を聞くと誰かわかる
・自分の身体が認識できず、片側だけを使う

失認症は、両側後頭葉の損傷が原因で発症します。

失語症

聴く・話す・読む・書くなどの言語機能がうまく働かなくなる障がいです。具体例として、以下のような症状があります。

・相手の話の内容は理解できるが、返事の言葉が出てこず話せない
・文字が思い出せない
・文章の意味はわかるが、言葉に出せない
・思っていることを言葉で表現できない

失語症は、左半球や前頭葉下部、側頭葉、角回などの損傷が原因で発症します。

高次脳機能障害の方と働く上で必要な配慮とは

高次脳機能障害の方と働くには、症状について職場全体で共有し、働きやすい環境を作ることが大切です。具体的にどのような配慮が必要か確認しましょう。

記憶障害

記憶障害の方は、覚えることや思い出すことに困難が生じます。業務を依頼する際は、口頭ではなく、メモやメール、マニュアルなどで文字に起こすようにしましょう。また、メモを受け取ったことを忘れてしまう場合もあるため、同じメモを複数用意しておくと安心です。

注意障害

注意障害の方は、集中できなかったり、気が散ってしまったりするため、短い休憩を何度か挟むと良いでしょう。周りに動くものや音が鳴るものなど、気が散るものを置かない配慮も必要です。また、本人の混乱を防ぐため、業務中に話しかけたり、同時に動作する必要がある業務を任せたりするのは避けると良いでしょう。

遂行機能障害

遂行機能障害の方は、段取りを立てることが苦手です。業務が複数ある場合、どの業務から始めれば良いかわからず困惑してしまいます。優先順位をつけてから業務を依頼したり、タイマーで業務を区切ったりするなどの工夫をしましょう。

社会的行動障害

社会的行動障害の方は、急に怒り出したり、泣き出したりと思わぬ行動をとることがあります。静かな環境に移動して、クールダウンできる時間を作るようにしましょう。また、一緒に行動を振り返るというような、協力的な姿勢も大切です。

病識欠落

病識欠落の方は、自分の障がいに気付けていないため、実体験で認識してもらうのが有効です。
たとえば、左手が麻痺で動かせないにもかかわらず、両手を使う業務に取り掛かろうとすることがあります。そのような際には、すぐに止めるのではなく、フォローできる状態を作ってまずは任せてみましょう。困難なことへの認識を一緒に正していくことが求められます。
ただし、本人ができることにも目を向け、怪我をしないように配慮しましょう。

失行症

失行症は、適切な動作や指示された動作を行うことが困難なため、場合によっては手助けが必要です。何ができて何が困難なのかを把握しましょう。動作ができていないときに、責めてはいけません。何度も繰り返し使い方を教えるようにしましょう。

半側空間無視

半側空間無視は、左右どちらかの空間の認知が困難なため、歩行時は相手の見えづらいほうに立って歩くと事故や怪我の防止につながります。また、声をかける際は注意が向きやすいほうからにするといった工夫をしましょう。

失認症

失認症は、見る・聴く・触るだけではうまく理解ができないため、複数の感覚を使用して工夫しましょう。たとえば、顔を合わせただけでは相手を理解することが困難ですが、声をかけられると認識できることがあります。視覚と聴覚、視覚と触覚など、状況に合わせて対応することが効果的です。筆談やジェスチャーなどさまざまなコミュニケーション方法を活用しましょう。

失語症

失語症は、言語機能がうまく働かないため、コミュニケーション時は複数の手段を用いましょう。口頭だけでなく、文字や写真と一緒に伝えるなどの工夫を行うと、相手も理解しやすくなります。また、会話は短い文でゆっくりと話しかけ、返事も相手のペースに合わせて待ちましょう。

まとめ

高次脳機能障害は、脳の損傷部位によって、障がいが分類されます。一人ひとり症状は異なるため、困難なことやコミュニケーション方法、対応方法などをまとめておくと、周囲の人もフォローしやすいでしょう。職場全体で働きやすい環境を作れるような工夫が必要です。
ワークリアでは、障がい者雇用に関するお悩みや雇用後の体制構築など、企業様に向けたサポート全般を行っています。何から始めればいいかわからない企業様へも、0からサポート。障がい者雇用に関してお困りの企業様は、まずはお気軽にお問合せください!

ワークリアとは

ワークリアは、障がい者専門の人材紹介サービスと障がい者雇用にまつわるコンサルティングサービスを運営しております。
障がい者採用にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。